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(日本の『国柄』とは何だろうか:東京大学名誉教授・平川祐弘)

2019年08月08日
(日本の『国柄』とは何だろうか:東京大学名誉教授・平川祐弘)


https://special.sankei.com/f/seiron/article/20190808/0001.html


・四の五のと解説は不用である。〔本居宣長〕の一句:「敷島の 大和心を 人問わば 朝日ににおふ 山桜花」に尽きる。


・例えばこの記事では、〔工藤隆氏〕(私と同い年。日本文学・演劇研究者)が『深層日本論』で、「日本では神道というアニミズム系文化(万物に魂が宿る)の基層の上に漢文化や西洋文化の表層が重なって近代化が達成された」と言っているのが一番腹に落ちる。


・産経スペシャル・[正論] から、記事を以下。


・「【[正論] 日本の『国柄』とは何だろうか 東京大学名誉教授・平川祐弘】産経スペシャル 2019.8.8」


・「〔サミュエル・ハンチントン〕は冷戦後の世界を『文明衝突』の時代と予言した。2001年9月11日、イスラム過激派が米国で同時多発テロを決行するに及んで、宗教文明史観は的中したかのごとくであった」


・「このハーバード大教授は、世界を宗教文明圏に分類した。米国と欧州連合(EU)は『キリスト教圏』。中東、パキスタン、インドネシア、マレーシアは『イスラム圏』。ロシアやスラブ諸国は『ギリシャ正教圏』。中国、韓国、台湾、シンガポールは『儒教圏』。インドは『ヒンズー圏』などの単位に収まる。〈だが日本はうまく収まらず、『儒教圏や仏教圏と異質』だ〉という」


≪舶来宗教というファッション≫


・「実は誰しも日本の宗教文明の異質性を薄々(うすうす)感じている。大陸文化は古代から尊重された。だが仏道が伝わると、土着の信仰を自覚し、神道と呼び、〔聖徳太子〕は『和ヲ以テ貴シトナス』と神仏を共存させた」


・「舶来宗教がもてはやされる様は『源氏物語』に顕著だが、キリシタンも当初は仏教の一派と錯覚され、デウスは大日如来、マリア様は観音様と同様に崇(あが)められた。その流行の様は、今日ホテルでキリスト教式の結婚式をあげるのと同じだ。ただしチャペルの挙式が多かろうとも、日本がキリスト教国となったわけではない」


・「葬式も多くは仏式だが、タイ、ミャンマー並みの仏教国とはいえない。現に日本人の多くは『無宗教』と答える。では儒教圏でないのか。大和言葉の人が『漢魂漢才』になるとは、〔菅原道真〕や〔紀貫之〕も思わなかった」


・「和歌や物語が発達し、理想は和魂漢才だ。和魂とは、シナ文化輸入以前の日本人の精神だが、和魂の把握は他者との関係だから、幕末以降の和魂洋才の際は儒教精神も含む。しかし日本人が東洋精神や武士道を主張したのは、強がりもあった。だから米国に敗れるやインテリは〔大和魂〕や〔神道〔について黙ってしまった」


・「ではなぜ日本人は自己の宗教文明史的なアイデンティティーに自信がないのか。明治21年の憲法制定会議で伊藤博文はこう述べた。


〈欧州ニ於イテハ宗教ナルモノアリテ憲法政治ガ機軸ヲナシ、深ク人々ノ心ニ浸潤シテ、人心此ニ帰一セリ。シカルニ我国ニアリテハ宗教ナルモノ、ソノ力微弱ニシテ、ヒトツモ国家ノ機軸タルベキモノナシ。仏教ハヒトタビ隆盛ノ勢ヲ張リ、上下ノ人心ヲ繋(つな)ギタルモ、今日ニアリテハ既ニ衰退ニ傾キタリ。神道、祖宗ノ遺訓ニ基キ之ヲ祖述スト雖(いえど)モ、宗教トシテ人心ヲ帰向セシムルノ力ニ乏シ〉


それを補うために伊藤は天皇を頂点に戴(いただ)く『君臣相睦(むつ)み合う家族国家』を理念とする天皇制という国体を日本に据えた、と一部政治思想家は批判する」


≪日本には万世一系の天皇≫


・「しかし天皇を戴くについては歴史的必然があった。中国に比べ日本には『万世一系の天皇』がいる。それが昔から誇りだった。日本人は天皇様だけは守りたいと国体護持を条件に昭和20年8月、降伏を受諾し、立憲君主制を維持した」


・「祖神が〔天照大神〕で神道の大祭司である天皇家は、政治権力はなくとも権威はある。そんな日本の国体を自己誇大化して賛美したのが『皇国史観』なら、その裏返しが、神道の説明はできずとも、悪口だけは言う、一部知識人の日本観だろう。自信喪失の敗戦後は、〔大塚久雄ら〕がまず〔洋魂洋才〕が理想だと説いたが、しかし〔森鴎外〕が早く見通したように、日本人が安々(やすやす)と自己を捨てるはずもない」


・「大和魂が米国占領軍のお達しで禁句となるや、GHQ史観で育った一部日本知識人は、日本固有の宗教文化的アイデンティティーを語ると嫌な顔をする。だが日本の文明史的規定は実証的に語るがよい。たとえば〔工藤隆氏〕は『深層日本論』で日本では神道というアニミズム系文化の基層の上に漢文化や西洋文化の表層が重なって近代化が達成されたと解釈した」


・「世間の盲点をついた視座で興味深い。一神教ではゴッドが天地を創造するが、日本では万物は自生する。その一つ一つに霊(アニマ)が宿るとするからアニミズムという。わが国では神道の仏教化以上に、仏教が神道化した」


・「そのことは『山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)』が日本人好みの仏典の言葉だと指摘すればわかる。古来の御霊(ごりょう)信仰があるから、日本では死者を『仏さん』と呼ぶ。ほかの仏教圏にそんな例はない」


≪GHQ史観の後継者たち≫


・「徳川時代の漢学者は中華本位の色眼鏡で日本を批判した。今の言葉でいえばチャイナ・スクールの偏見だが、〔本居宣長〕はそれを漢意(からごころ)と呼んだ。近頃は日本の宗教学者で西洋一神教本位の色眼鏡で神道を批判する人がいるが、それも西意(からごころ)だと私は言いたい」


・「戦時中、米軍は〔天皇〕と〔神道〕を敵視し、明治神宮を爆撃し焼き払った。だがそんなゴッド・エンペラー観の誤りに気づいたからこそ、フォード以来、米国大統領も明治神宮に参拝する。それなのに占領軍の神道指令にいまなお従う官界や左翼論壇の人たちは、比較研究者が天皇のおつとめの巨視的な説明に神道的要素をあげると、『なぜいま国体なのか』と色をなし、大げさに騒いでいる。(ひらかわ すけひろ)」・・・


《宇治橋鳥居の日の出》

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